もう何年も、シーズンが来るたびに1~2回はトライはしていた。そのたびに淡い期待は霧散し、心を折られ、もう年齢的にも自分には登れないんだな、と半ばあきらめモードだった。
はじめてトライした時はひどかった。核心の入口のスローパーが保持できず、ガストンに手を出すことすらできなかった。手が出せるようになっても、ガストンを保持できない。今まで登ってきた四段は何だったのかと思うほどに(グレードが微妙か得意系だった自覚はあるけど)なにもさせてもらえなかった。
今となってはエキスパートへの登竜門的な課題になってしまったけれど、それでもいつも心の中にあり続ける課題だった。
変化があったのは今シーズン。例年の如く、わくわくしながら核心の練習をしてみると、ガストンのマッチが安定してできた。勘違いでもなんでも、トレーニングの効果が実感できた気がして嬉しい。ただ、ここからが長かった...。
二回目にトライしに行った時も、全く同じ内容で進展なし。これは通っても無駄だろうと判断し、一時撤退。
それからは自分に足らないものを考え、食生活まで見直し、その他も含めいろんな課題に向けてひたすらにジムでトレーニングの日々。いくつになっても身体やテクニックが向上するのは楽しいもの。そしてそれは、一時的な楽しさの比較にならない。
いまさらながら、目標が明確だと人間は努力を楽しめるんだなーと再確認。
笠置山の雪が解けてからは、時間を作って通った。朝の2時間足らずのために車を走らせたり、ジム閉店後に一人で夜中まで登ったり、本当に充実していた。クライミングをはじめて15年ほどたち、すっかりおじさんになってしまったけど、今が一番楽しいと断言できる日々だった。
4月9日。
マッチャンから要請があり、カモシカエリアに大さんの3級をやりに行った。気温も低く空気も乾燥し、最高のコンディション。ヌメリ手の自分にとっては、確実に今シーズン最後。ムーブやコツを伝えて「またあとで来ます」とか言ってカモシカから林道上まで軽登山。(その後合流しなかった。ホントにひどい奴だ。)
イメトレとかしてわくわくしてたらいつの間にか岩到着。時間がないのでいきなり取り付く。コンディション最高なのにやっぱりできない。5トライ6トライと重ねるうち、だんだんヨレてきた。来シーズンに持ち越しかーとあきらめモードだったけど、最後に思いついた重心位置を試すといい感触!けど時すでに遅し。体から終了のお知らせ。せめてあと1時間あれば...。
翌日。
コンディション的に今シーズンラストチャンスなのは確実。体の調子はイマイチだけど、3トライくらいならもってくれるかも、とジム閉店後に一路笠置山へ。筋肉痛や指の圧痛など、マイナス要素いっぱいだけど、岩に近づくにつれモチベーションがあふれてくる。
アップして取り付くも、やっぱりだめ。肉体の疲労が否めない。トライを始めてからずっと嫌いなままのスローパーが逃げ始める。あと1~2トライでおしまいだなーと思いつつ、最後の悪あがきにフットホールドを微調整。
登れたら泣くほど嬉しいんだろーなーとか想像してたけど、ランジが成功した直後には、時間あるしもう一本登りに行けるかも、なんて考えてた。強欲。
いろいろミスったトライだったけど、まだ余力を感じるってことはやっぱり四段ーなんですね。自分にとっては、コツを見出すのに本当に時間がかかった課題だった。分かってしまえば何とかなるタイプ。もっと強ければ回答も早くなるのだろうけど...。
度重なる故障や重度の腰痛で何度も心折れかけたけど、諦めずに続けてきて本当に良かった。こんなクライミングスタイルを理解してくれる家族にも感謝。
いつまでこの活動を続けられるのか分からないけど、次の目標たちと掃除を待つ岩たちに向けて、まだまだトレーニングの日々は続く。ハズ。
来シーズンも楽しみだなー。